我が家の事情
我が家が移住するには、資金的にかなり苦しい状況であることを負債の洗い出し作業で自覚させられましたが、それで計画を中止しようなどとは思わないし、思うことができない状態でもありました。
「移住するのがイチバン」だと思った理由を、プライベートな問題が重なったからといいましたが、けっこう差し迫っていたのです。
医療過疎の島
実は、妻の実家は沖縄なのです。
沖縄といっても本島ではなく、宮古列島に属する離島です。
この島、名前を多良間島(たらまじま)といいます。
東方67km先にトライアスロンで有名な宮古島があります。
多良間島で大病や大ケガをすると島内に1ヶ所ある診療所では対応しきれなくて、お隣の宮古島にある大きな病院へ行くしか手立てはありません。
飛行機で20分、フェリーで2時間かかりますが、命に関わる緊急の場合は自衛隊のヘリコプターで搬送してもらいます。
そんな医療過疎の島です。
突然やってくる介護問題
何をかくそう、この移住プロジェクトのきっかけとなったのは「介護」でした。
2016年、多良間島で元気に暮らしていた妻の両親ですが、2月のある日、義母がちょっとした事故で倒れ、入院することになりました。
そう、お隣の宮古島にある病院にです。
まさか義父が一緒に行くわけにもいかずひとり島に残ったのですが、一切の家事を義母に任せっ切りにしていたので、本人はもちろんのこと、それぞれ島を出て暮らしている子どもたちも大慌てでした。
この時は、子どもたちが交代で実家に帰り義父の世話をすることで事無きを得たのですが、この先、高齢の夫婦ふたりだけで生活していくのはどうなのかという不安が残りました。
じゃあ、ウチが
子どもたちはヒヤヒヤしながら、高齢の親をそれぞれ遠くから見守ることとなったわけですが、具体的に行動を起こすには少しハードルが高過ぎました。
誰かが実家に帰って同居するというのが、親にとっての一番の幸せであることは分かっているのです。
しかし、残念ながらそれぞれの事情がそうすることを阻みます。
そんな中で、最も融通が利きそうなのは我が家でした。
少なくとも私はそう思いました。
私個人の事情も判断に大きく影響したのですが、そのことは後に説明します。
タイムテーブル作り
そういう経緯で決意を固め妻に相談したところ、私の事情も理解しているからでしょう、最初は驚いていましたが徐々に心を動かしてくれました。
ただし、同居するのは多良間ではないというのです。
離島問題
よいところなのですよ。
多良間は。
何度も訪れていますので、この島で暮らすのもわるくないと思っていましたし、何せ実家があるのです。
ここに住まない手はない、と思うのは当然じゃないですか。
でも妻はダメだといって譲りませんでした。
実は妻は医療従事者でして、その道一筋に30数年やって来ているのですが、まず両親を診てもらうための病院が島にはないことを指摘しました。
当時、義父母は電話で身体の不調を常に訴えてきている状態だったので、病院がないなんてあり得ないわけです。
そしてもうひとつ。病院がないということは、妻の経験を活かせる職場もないということを意味しているのです。
大胆かつ繊細に
妻のたっての希望により、移住先は沖縄本島で探すこととなりました。
医療従事経験を活かし事業を始めることも考えていたようですが、何より多良間から両親を受け入れるための段取りを組むのが先決でした。
義父母の状態を考えると、あまり時間がなかったのです。
あとは突っ走るしかありません。
とはいえ、ただやみくもに突っ走っても目標は達成できません。
私は「大胆に、そして繊細に」という言葉が以前から好きでした。
このときの状況に当てはめれば、思い切って決断し、緻密に計画を練るということにほかなりません。
自分のやり方を信じ、それを突き詰めるだけです。
ひとそれぞれ様々な問題を抱えているとは思いますが、考えて考えて考え抜けば答えは必ず出るはずです。
自分を信じて進むしかありません。
タイムテーブルは必須
このように思い切って決断したわけですから、つぎは緻密な計画を練る番です。
例の記録用ノートに、その日から1年分の空白カレンダーを枠取り、タイムテーブルとしてさまざまなことを書き込めるようにしました。
これに思いついた予定を書き込み、結果を記入しながら調整してつぎの予定を加えるというふうに、準備の進行状況をひと目で把握できるようにするのです。
それだけではなく、資金の動きもどんどん書き込みました。
これを見れば、今現在、我が家の移住計画がどの段階にあり、この先どうしなければならないのかという方向性を見つけやすくなるし、何より全体の状況から判断できるので忘れや見落としを防ぐことができます。
そこまでやらなければならないのかという声が聞こえてきそうですが、家族全員の人生に波風を立てることになるのですから答えは簡単です。
そこまでやるべきでしょう。
そこまでやるからこそ、後悔せずにすむのだと思います。